過去に読んだ本を読み返すか否か
月に数冊は必ず本を読んでいるのですが、以前友達と本の話をしたときに読み終えた本を読み返すかという話題になりました。
私は音楽関係の本や雑誌は何度も読み返すけれど、小説はあまり読み返しません。しかし小説は美しい言葉や素敵な表現、人生のヒントになる事が書かれていたりして、時に忘れられない言葉に出会えたりする。
そんな読書感想文というか忘備録として読んだ本を簡単に紹介出来る記事を残せたらと思い今回記事を書き始めました。
日本に一時帰国した際に小説を買ったり、実家には読書家の父が沢山本を買い、本棚においてあるのでその中から面白そうなのを選んでは持って行ったりしています。
私の読む本は父の本から選んでいた事が多かったのでかなり父の影響が強いと言えるでしょう。
さて、今回第一回目に紹介する本は
四月になれば彼女は
という川村元気著の作品である。川村氏といえば「世界から猫が消えたなら」という小説が有名で、おすすめの感動小説は?といえばかなりの高確率でその作品が取り上げられるほどの評価の高い作品を書いた方で有名でしょう。
その他に「電車男」「モテキ」「君の名は。」「天気の子」などの数多くのヒット映画の製作にも加わっており、小説の中でもその言葉の儚くも美しい表現は過去の映画を思い出させるような気もします。
この作品の主人公藤代は弥生という婚約者がいて、これから結婚するという頃に、かつての恋人から手紙が来たことからこの話は始まります。
このかつての恋人のハルの手紙は、彼女が旅した景色やそこで起こったことをふまえて藤代との過去を思い返すという短くも少し寂しさを感じる手紙でした。
登場人物として、
藤代 物語の主人公
ハル 大学時代の元恋人
弥生 藤代の婚約者
純 弥生の妹
大島 藤代とハルの大学のOB
このあたりの人物が物語の重要人物と言うべきでしょうか。
藤代とハルの過去に一緒に過ごした話はあるものの、物語中で彼らが会うことはなくて、最後の最後まで藤代がどう彼女を思って行動するのか先が読めなくてそこもドキドキしました。
この登場人物たちはそれぞれ自分の不安と向き合いそれに打ち勝てなかったり、自分や大切と思っていた人を信じきれなくてそれを後悔したり突然姿をくらましたり、一見普通そうな人達なのに破天荒な人ばかりだな、なんて思ってしまいました。
弥生が過去に何度か婚約を破棄したことや藤代との同棲から突然姿を消したこと、大島という大学のOBで藤代やハルのサークルにいた男もまた幸せそうな顔をしている時に自殺未遂をしたり、自分が幸せで悩むことも苦しむ必要もないとき程不安になって思いもよらない行動をするって意外とあり得るかもしれない。
物語の中で人間じゃないものと結婚した人の話があり、そこでイルカと結婚した人はもしかしたら永遠の愛を貫きやすいかもしれないと弥生と藤代は言います。意思の疎通が人間と同じように出来ないがゆえに性格の不一致とか価値観の違いで別れるということがないから案外いいかもしれないと。
これは弥生が人を愛し愛されるから時に辛くなったりするんだという遠回しな気持ちの表れだったのかなと思うけれど、最終的に藤代は友人の「人は誰の事も愛せないと気付いた時に孤独になるんだと思う。だってそれは自分を愛していないってことだから」という言葉に背中を押されたことで行動に出る。
この物語終盤でのハルの真実に切なくなったり、藤代がどうやって自分自身や婚約者と向き合っていくかという最後の最後まで目が離せなくなる結末にやはりこの作者は凄い人だと感じました。
でも最後読み終わったら何故だか暗闇のトンネルから抜け出し明るい日差しをあびたかの様な清々しい気持ちにもなりました。
話の中で使われる物や背景の描写がこの作品は美しく、そして緩やかでその独特な表現が作者の個性的で美しい世界観が生まれてくるのかと思います。